品質で選ばれる会社は、数字でも強くなる。
日伸建設工業の経営改革とSitrom-CC導入の背景
取締役 大庭由里衣 様
近年は新卒採用にも力を入れ、若手から中堅までバランスの取れた組織づくりを進めながら、次世代への事業承継と将来の「元請化」を見据えた体制強化を進めている。

Sitrom-CCを導入して大きな価値を感じているのは、現場の原価管理と経理の会計管理が一つにつながった、ということ。建設業では、現場担当者が把握、する数字と経理が処理する数字が一致しないことも少なくない。Sitrom-CCでは、日々の進捗を原価管理で確認しながら、その結果を会計の数字へ連動させることができる。現場と経理が同じ情報を前提に話せることは、経営判断のスピードと精度を高めるうえで大きな強みだと感じている。
これからの10年は、現在の高い施工能力を土台に、元請企業として必要な書類作成力や管理能力を蓄えていきたい。
安売りしない技術力を、利益につなげる。
日伸建設工業が選んだ「原価と会計の一元化」
建設業界では、施工力の確保だけでなく、利益を残せる体制づくりと次世代に向けた組織づくりが同時に問われています。日伸建設工業は、まさにその両立に取り組む会社です。高速道路や滑走路といった大型公共工事で高い評価を得る施工力を持ちながら、若手採用にも成功し、次の10年を見据えた経営基盤の整備を進めています。
同社が目指しているのは、単に工事をこなす会社ではなく、元請として選ばれる会社への進化です。その実現に向けて必要だったのが、施工力を利益へ確実につなげるための「数字の見える化」と、現場と経理を分断しない管理基盤でした。そこで導入されたのが、工事原価管理・管理会計システム「Sitrom-CC」です。今回は取締役の大庭由里衣様に、採用、事業承継、施工力、そして管理基盤改革について伺いました。
− 若手が入り、育ち、定着する。施工会社の持続性を支える組織づくり
建設会社の経営において、採用はもはや人事のテーマではなく、事業継続のテーマです。その点で日伸建設工業の強みは明確です。同社では新卒採用が継続的に進んでおり、さまざまなサービスを活用しながら、若手人材の確保を着実に進めています。
「採用がうまくいっている理由は、募集手法だけではありません。私と採用担当者が、それぞれの役割を活かして学生と丁寧に向き合い、会社の魅力を熱意と細やかさの両面から伝えていること。そして、入社後に若手が孤立しない組織構造を持っていることが大きな要因だと思います」
特に印象的なのは、年齢構成のバランスです。建設業界では30代が薄い会社も少なくありませんが、同社には30代の先輩社員が在籍し、若手と40代の中堅社員が現場で組む体制ができています。
「若手が相談しやすく、日々の実務の中で技術を学べる環境は、採用後の定着率や成長スピードにも直結します」
経営者の視点で見れば、これは単なる“社風の良さ”ではなく、将来の施工力を支える重要な経営資産です。
− 「この会社と社員を残したい」という想いから始まった、事業承継のリアリティ
大庭様が、父が代表取締役を務める同社の事業承継を意識したのは大学時代でした。
「さまざまなアルバイトを通じて外の社会に触れる中で、好きな仕事なのに辛そうな姿を見ることがありました。逆に、幼い頃から見てきた父や社員たちは、常にやりがいを持って働いていて。この会社がこれからも成長し、皆が働き続けられるようにしたいと思ったのです」
卒業後はすぐに家業へ入るのではなく、ゼネコンで経験を積み、外から建設業を学んだうえで会社へ戻る道を選びました。元請側の視点や現場運営の実務を自分の中に取り込んでから事業承継に向き合う姿勢は、同社が将来「元請化」を見据えるうえでも象徴的です。
− 安売りしない。最後の工程を仕上げ切る施工力が、利益の源泉になる
日伸建設工業の成長を支えているのは、大型物件、とりわけ公共事業の受注です。高速道路工事や鹿児島県馬毛島の基地建設に伴う滑走路の路盤工事など、規模が大きく、高い施工能力と機動力が求められる案件を手がけています。
「当社が担う舗装工事は、工事全体の最終工程です。前工程の遅れが集まりやすく、工期が厳しくなった状態で引き継がれることも少なくありません。そうした状況でも品質を落とさず、納期に間に合わせる。その施工力が高く評価され、価格競争に巻き込まれずに受注できるブランドにつながっています」
さらに、重機や機械の多くを自社保有していることも重要です。必要な機材を必要なタイミングで動かせる機動力は、急な工程変更への対応力を高めるだけでなく、収益性の面でも大きな意味を持ちます。高い施工技術・自社機械・適正価格で受注する姿勢が組み合わさることで、日伸建設工業は「安売りしない施工会社」としてのポジションを確立しています。
− 成長する現場に、管理基盤が追いついていなかった
一方で、施工力が高まり、受注が伸びるほど、管理面の課題は大きくなります。
「以前使っていた独自開発システムでは、工事全体を横断して把握することが難しく、データ出力もPDFのみ。必要な数字をExcelで再加工しなければならず、経営の意思決定に必要なスピードで情報を得られない状態でした」
特に課題となっていたのは、『原価と利益をリアルタイムで見られないこと』でした。工事が終わってから結果を見るだけでは、打ち手が後手に回ります。
「経営者に必要なのは、今、どの現場で、何が起きていて、利益がどう動いているのかを把握できることです。施工力が高い会社ほど、その力を利益へつなげる管理基盤が求められます」
− 現場と経理が同じ数字で話せることが、経営の強さになる
Sitrom-CC導入後に最も大きく変わったのは、現場の原価情報と経理の会計情報が一元化されたことでした。
「建設業では、現場担当者の感覚値と経理の集計値がずれることが珍しくありません。しかし、数字の食い違いを毎回突き合わせていては、会議は“判断の場”ではなく“確認の場”になってしまいます。Sitrom-CCでは、日々の原価進捗を現場で確認しながら、その情報を会計へつなげていくことができます」
現場、経理、経営が同じ数字を前提に会話できるようになることで、利益管理の精度が上がり、意思決定も速くなります。これは単なる業務効率化ではなく、施工力を経営成果へ変換するための仕組みです。
− 次の10年で必要なのは、施工力の先にある「元請力」
日伸建設工業が次に見据えるのは、『元請として仕事を取れる会社』への進化です。ここでいう元請化とは、単なる売上拡大ではありません。施工計画、発注者対応、品質・工程・安全管理、写真管理、各種提出書類など、工事全体を主導するための管理能力を備えることを意味します。
「これからの10年は準備期間だと捉えています。元請として仕事を取っていくために必要なのは、現場力の延長線上にある管理力であり、それを支えるシステムです」
− 書類のフォーマット化とAI活用が、若手育成と元請化を加速させる
大庭様がSitrom-CCに期待しているのは、原価管理にとどまりません。
「Sitrom-CCに対して、施工計画書など各種書類の一元管理、提出先ごとに異なる様式への柔軟な出力、そしてAIを活用した抜け漏れチェックや写真撮影タイミングの通知など、現場と管理部門の双方を支える役割を期待しています。単に便利になるからだけではなく、ベテランが持つ判断基準や確認の勘所を、システムの形で若手へ渡せる可能性があるからです」
若手採用に成功している日伸建設工業にとって、採った人材を早く戦力化し、管理面でも育てていく仕組みは今後さらに重要になります。技術継承と管理力の標準化を、同時に進める。その発想こそが、次の10年の競争力につながっていきます。
【編集後記]
日伸建設工業の導入事例が示しているのは、優れた施工会社が次の成長段階へ進むとき、必要になるのは「もっと現場を頑張ること」だけではないということです。施工力を利益へつなぐ管理基盤、若手が育つ組織、そして元請として全体を動かすための仕組み。それらがそろって初めて、会社は次のステージへ進めます。
「原価と会計の一元化」は、単なるシステム刷新ではありません。現場の強さを、会社の強さへ変えるための経営改革です。日伸建設工業が進めるこの取り組みは、同じように現場力には自信がありながら、管理体制や次世代づくりに課題を感じている企業にとって、多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

写真左)フォロス後藤代表 右)日伸建設工業株式会社 取締役 大庭由里衣 様